レジン3Dプリントを経験したことがある方なら、造形が完了しても作業は終わらないことをご存じでしょう。その後には、手間のかかる後処理が待っています。
モデルに付着した未硬化レジンを洗浄する作業は、煩雑で手間がかかります。イソプロピルアルコール(IPA)などの溶剤を扱う必要があり、時間がかかるだけでなく、安全で十分に換気された作業環境も必要です。さらに、使用後の溶剤は適切に廃棄しなければなりません。
多くのユーザーにとって、この煩雑な洗浄作業は、FDMプリンターの手軽さと比べた際にレジン3Dプリントの大きなデメリットとなっています。
しかし、後処理の煩わしさを我慢する必要はありません。近年では、新たな選択肢として 水洗い可能レジン が登場しました。強力な薬品ではなく水で造形物を洗浄できるため、後処理を大幅に簡単にできることが期待されています。
また、水洗い可能レジンは脆いというイメージから使用をためらっていた方もいるかもしれません。しかし、 Water-Washable Tough Resin はその課題に対応し、扱いやすさを損なうことなく、より優れた耐久性を実現しています。
では、水洗い可能レジンと通常のレジンでは、どちらが優れているのでしょうか。また、Water-Washable Tough Resinはその中でどのような位置付けなのでしょうか。この記事では、それぞれのレジンの違いを詳しく解説し、用途に最適なレジン選びをサポートします。
水洗い可能レジンとは?

水洗い可能レジン最大の特長は、洗浄のしやすさです。
水洗い可能レジンは、その名のとおり、イソプロピルアルコール(IPA)などの薬品ではなく、水で洗浄できる3Dプリント用レジンです。
このレジン技術の進化により、刺激の強い薬品に触れる機会を減らせるだけでなく、プリント後の後処理も簡単になります。
水洗い可能レジンなら、造形物を水ですすぐだけで、表面に付着した未硬化レジンを洗い流せます。そのため、高価なIPAを大量に用意したり、薬品の蒸気を吸い込まないよう十分に換気された洗浄スペースを整えたりする必要がありません。
多くの3Dプリント愛好家が、水洗い可能レジンを扱いやすさから選んでいます。造形が完了したら、水だけを使って数分で洗浄できるうえ、引火性のある液体を扱う心配もありません。

そのため、水洗い可能レジンは、ホビーユーザーや限られたスペースでプリントする方に特に適しています。IPAの取り扱いが安全面での懸念となる環境でも扱いやすいのが特長です。また、住宅環境でプリントする場合は、不快な臭いを抑えられるため、より快適に3Dプリントを楽しめます。
ただし、水洗い可能レジンにも欠点があります。後処理を簡単に行えるという利点がある一方で、通常のレジンよりも脆くなる傾向があります。そのため、高い強度や柔軟性が求められる用途には、必ずしも最適な選択とはいえません。
多くのユーザーは、水洗い可能レジンで造形したモデルはひび割れが発生しやすく、特に湿気にさらされた場合や取り扱い時にその傾向が強いと感じています。そのため便利ではあるものの、耐久性が最も高い選択肢とは限らず、特に日常的に使用する機能部品には適さない場合があります。
このような制限はあるものの、後処理のしやすさを重視する場合には、水洗い可能レジンは依然として優れた選択肢です。特に、細かなディテールや滑らかな表面品質が重要で、強度がそれほど求められないミニチュアモデルやフィギュアの造形で人気があります。
たとえば、展示用の魅力的な3Dプリント作品のように、精細な造形物を作りたい場合、水洗い可能レジンは造形品質と扱いやすさの優れたバランスを提供します。
通常のレジンとは?
通常のレジン(スタンダードレジンとも呼ばれます)は、長年にわたりレジン3Dプリントで広く使用されてきた定番の材料です。優れた造形品質、耐久性、汎用性を備えているため、多くの経験豊富な3Dプリントユーザーに選ばれています。ただし、水洗い可能レジンと比べると、後処理にはより多くの手間がかかります。
通常のレジンで造形した後は、モデル表面に残った未硬化レジンを、一般的にIPAや同様の溶剤を使って洗浄する必要があります。そのため、薬品を安全に取り扱うための専用の洗浄スペースや、手袋などの保護具を用意しなければなりません。
また、溶剤を使用することで、十分な換気や適切な廃棄といった追加の作業も必要になります。IPAでモデルを洗浄する作業は煩雑なだけでなく、時間もかかります。さらに、IPAは未硬化レジンによって汚染されるため、定期的に交換する必要があり、長期的にはコストもかさみます。
こうした課題があるにもかかわらず、通常のレジンはその汎用性の高さから、多くのプロフェッショナルに選ばれ続けています。通常のレジンには幅広い種類があり、用途に応じた特性を選択できます。
たとえば、曲げが必要な部品向けの柔軟性レジン、高い強度が求められる用途向けのタフレジン、精密なモデル向けの高精細レジンなどがあります。そのため、機能試作から高精細なアート作品まで、幅広いプロジェクトに対応できます。
通常のレジンが特に優れているのは、その強度と耐久性です。水洗い可能レジンと比べると、スタンダードレジンは応力が加わった際にひび割れや破損が発生しにくくなっています。そのため、機械的な力が加わる部品や、頻繁に取り扱う部品に最適です。
たとえば、エンジニアリング部品や日常的に使用する実用品を造形する場合、通常のレジンが持つ高い耐久性は大きなメリットになります。後処理には手間がかかるものの、長期的な耐久性を考えると、その手間に見合う価値があります。
3Dプリント用レジンの選び方については、3Dプリントに適したレジンの選び方もご覧ください。さまざまな種類のレジンについて詳しく解説し、用途に最適なレジンを選ぶためのポイントを紹介しています。
水洗い可能レジンと通常のレジンの違い
水洗い可能レジンと通常のレジンを比較する際は、造形品質や使いやすさだけでなく、後処理や耐久性まで含めた3Dプリント全体の工程を考慮することが重要です。自分に適したレジンを選ぶうえで、次のポイントが重要になります。
後処理:この点では、水洗い可能レジンが明確なメリットを持っています。水で洗浄できるため、IPAやその他の溶剤を使うよりも、洗浄作業は大幅に簡単で安全です。後処理の手軽さや安全性を重視するなら、水洗い可能レジンは非常に魅力的な選択肢です。一方で、高い耐久性が必要な機能部品を造形する場合は、通常のレジンが持つ強度を優先し、より手間のかかる後処理を受け入れる価値があるかもしれません。
造形品質:どちらのレジンも、細部の再現性や表面仕上がりにおいて高品質な造形が可能です。ただし、造形精度という点では、通常のレジンがわずかに優れる傾向があります。特に、厳しい寸法公差や精密なディテールが求められる部品では、その差が現れます。一方、水洗い可能レジンでも美しい造形は十分可能ですが、応力や頻繁な取り扱いに対する耐性は通常のレジンほど高くありません。
耐久性:強靭性と柔軟性では、通常のレジンが水洗い可能レジンを大きく上回ります。水洗い可能レジンはひび割れが発生しやすく脆い傾向がありますが、通常のレジンは応力がかかる用途でもより高い耐久性を発揮します。造形物が湿気などの環境要因にさらされる場合や、日常的に使用する場合は、通常のレジンの方が適しています。
環境への影響:水洗い可能レジンは、後処理で危険性の高い溶剤を使用する量を減らせるという利点があります。IPAなどの溶剤を廃棄する代わりに、水でモデルを洗浄できます。ただし、洗浄に使用した水には未硬化レジンの粒子が含まれているため、廃棄前に適切な処理が必要です。排水口へそのまま流してはいけません。レジン粒子を日光で硬化させた後、ろ過してから処分する必要があります。
コスト:水洗い可能レジンは初期費用が高くなる場合がありますが、長期的にはIPAなどの溶剤を購入する必要がないため、その分のコストを抑えられます。一方、通常のレジンはボトル1本あたりの価格は比較的安価ですが、IPAを継続的に購入する必要があるため、造形頻度によっては長期的なコストが高くなる可能性があります。
Water-Washable Tough Resin:両方のメリットを兼ね備えた選択肢?

では、水洗い可能レジンの手軽さと高い耐久性を両立できるとしたらどうでしょうか。Water-Washable Tough Resinは、その両方を実現するために開発されました。従来の水洗い可能レジンで大きな課題とされていた脆さを改善することを目的としています。

Water-Washable Toughは、一般的な水洗い可能レジンよりも高い耐久性を備えています。
Water-Washable Toughは、一般的な水洗い可能レジンの2倍の強靭性を備えており、より高い強度が求められるプロジェクトにも対応できる選択肢です。

Water-Washable Toughで造形した、精細なディテールを持つ3Dモデル。
Water-Washable Tough Resinは、大型モデルや、取り扱いや応力に耐える必要がある機能部品に最適です。一般的な水洗い可能レジンとは異なり、この高耐久配合により、ひび割れや破損が起こりにくい部品を造形できます。同時に、水で簡単に洗浄できる利便性も維持しています。
たとえば、頻繁に手に取って扱うミニチュアやフィギュアを造形する場合、Water-Washable Tough Resinは理想的な選択肢です。通常の取り扱いに十分耐えられる耐久性を備えながら、後処理は水洗いだけで簡単に行えます。
また、IPAを使用する際の煩雑さや手間を避けつつ、大型で強度の高い部品も造形したいホビーユーザーやプロフェッショナルにも適しています。
3Dプリントをこれから始める方にとっても、Water-Washable Tough Resinは、汚れが少なく耐久性にも優れているため、扱いやすい入門用レジンです。また、3Dプリンター選びに迷っている場合は、3Dプリンター購入ガイドもぜひご覧ください。選び方のポイントを詳しく紹介しています。
最適な造形結果を得るための実践的なポイント
どのレジンを選ぶ場合でも、より良い造形結果を得るためのポイントがいくつかあります。水洗い可能レジンを使用する場合は、造形物を十分にすすぐことが大切です。ただし、長時間水に浸けたままにすると表面が弱くなる可能性があるため、避けてください。Water-Washable Tough Resinでは、最後にエタノールですすぐことで、表面に残留物のない、よりきれいで鮮明な仕上がりが期待できます。
適切な硬化も重要であり、特にWater-Washable Tough Resinでは欠かせません。自然乾燥またはエアガンを使用して、硬化前にモデルを完全に乾燥させてください。また、適切な時間だけUVライトで硬化させることで、耐久性を最大限に高め、ひび割れを防ぐことができます。
最後に、廃液の処理にも注意が必要です。水洗い可能レジンを使用した場合は、未硬化レジンを含む洗浄水をそのまま排水口へ流さないでください。レジン粒子が完全に硬化するまで数日間日光に当て、その後に水をろ過し、硬化した粒子は可燃ごみとして廃棄します。このひと手間が、環境への影響を軽減することにつながります。

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